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2012年5月

2012年5月31日 (木)

読書感想文 ~北村薫 『ターン』 (新潮文庫 2012.5再読)

新潮社
発売日:2000-06
”◄►ターン。また昨日に戻ってる・・・私はたった一人で、この同じ一日を永遠に繰り返すのだろうか。"(文庫版帯より)
主人公・真希はある夏の日、自動車事故に合う。気がつくと自宅の座椅子で転寝から目覚めるところだった…生命の気配のまるでない、ただ自分一人だけ存在する世界で何をなしても、全てがリセットされ前日の3時15分に戻ってしまう毎日を繰り返す…1本の電話がつながるまで…

音がない世界とはどんなものだろう?自分以外の生物が存在せず、テレビもラジオも砂嵐。自らが発する音以外存在しない時間に主人公・真希は取り残された。
その時間は生み出したすべてをリセットし、うたた寝から目覚める前日の午後に戻り、また同じ時間から始めるのだ。
そんなファンタジックなシチュエーションを超えて、見ず知らずだった男女が"声"だけの交流で、純粋に相手を思いゆっくりと心を通わせる様子が穏やかで温かくて切なくて胸の高まりがとまらない。
二人をつないだのは一枚の真希の版画。お互いがお互いの作品から伝わる人柄に惹かれ恋に落ち、会えない運命に焦がれる上質の恋愛小説だと思う。
北村薫さんの作品は、主人公が自らを深く見つめなおす眼差しが優しくて好きだ。たくさん欠点だったり-後悔だったり、諦めだったり-あるけれど、でも"自分が愛おしい"と言う気持ちがひたひたと伝わってくるのだ。
真希が『自分が何を蔑ろにしていたのか』気付いた時、本当の自分の望みと向き合った時、時間の魔法は再び力を取り戻す。
真希が直面した事態は、実は日常にも置き換えられる事じゃないだろうか?何も変わらないと無為に過ごすことは、大切な何かを自ら蔑ろにしていることじゃないのか?作者は真希を通して大きく語りかけてくる。

全てが最後の言葉に凝縮され、わたしはこの言葉が持つ本当の優しさを知った。

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